富野由悠季、大いに吼える〜続き

というわけで、昨日の続きをば。

ちょっとしたトラブルが有ったものの、講演は続けられました。


ローカル性という前置きをしつつ、まずは日本とブラジルの現状比較についての話から。

富野氏は、文化庁に請われブラジルやアメリカで公演したと言うのですが、そこで感じたのは、彼らの近年におけるアニメへの関心の違いだそうです。
それは具体的には、以下の3つの事。

ジャパニメーションの影響で、ディズニー以外のアニメの存在を知った。
・年配でも楽しめるアニメがあるらしい。
・アニメは産業として成立するようだ。


日本ではすでに十分認知されつつある事も、ブラジルあるいはアメリカにおいてはようやく認められつつある事象なのだそうです。
特にブラジルにおいては、週一でアニメが作れる日本の環境と言うのは想像が出来ないそうで、この辺は国そのものの経済状態&国民の労働に対する態度の違いが大きいのでしょうけれど。


「日本は現在アニメ先進国です。しかし、先進国は先進国になった瞬間に、後退が始まっている。後進国に追われる立場になるんです」
「いつまでも日本のアニメ・ノウハウが通用するとは限らない。だからこそ、10年後、20年後を見据えたアニメ作りが必要」


確かに現状の韓国・中国・台湾のアニメへの取り組みを見るに、日本はまだ先進国だが、彼らが相当な勢いで追い上げていると言うのが分かる。

では一体どうすればいいのか?
富野氏はその手段の一つとして、「グローバルに通用する技術を学ぶ事だ」だと言っていました。


「技術に固執し、満足してはいけないが。映像の原則があるのも確か。それは、映像の歴史から人類が築き上げてきた物で、利用しないのは勿体無い」
「100人が100人面白いと言うものは、1人では作れない。だが、100万人、1000万人を面白いと言わせるものが作れるのも事実」


なるほど、なんとなく言いたい事が分かってきたような気がします。
個に執着せず先ずは学ぶ事。周り(周囲の人間及び世界の情勢)をよく見回すこと。それこそが、世界に通用するものを作るものになると。
この辺は、ハリウッドの徹底したエンターテイメントを追及する姿勢に学ぶ所が多いのでしょう。


「よく個性を大事に、とか。個性的な教育を、とか言われているが、そんなものを特別に意識する必要は無い。意識せずとも好みは働くのだから、むしろニュートラルな立場でいる事が重要だ」


なんというか、所々でかなり一般論から外れた事を話してはいるのですが、しっかりと利が適っていて思わずなるほど、と頷いてしまいました。

と、折角話がいい所に入ってきたところで、公演は終了。
うーん、1時間じゃ短かった。質問コーナーも無かったし。と、ちょっぴり残念な所もありましたが、内容的に大満足。
開始5分の『富野氏大人気なく怒る』が、見れただけでも収穫あり、ってなところでしょうか(笑)